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体活動や増殖など生命活動一般のためのエネルギーに再変換され利用される。食物中や皮下脂肪などの体内貯蔵エネルギー源物質はこの代謝の過程で、呼吸によって体内に取り込まれた酸素を消費し、最終的に炭酸ガスと水などとなり、体外に排出される。したがってこの全経過がどのように働いているかについては、摂取ないし消費された酸素や呼気に排出された炭酸ガスを測定することによって間接的に知ることができる。
このようにして測定されたエネルギー代謝量(消費量)は、エネルギー必要量に等しいわけであるから、その人が一日あたり何カロリーの食事をとればよいかという値に等しい。中高年は妊娠あるいは授乳中の女性を除げば、成長などにかかわるエネルギーの消費分を考慮に入れる必要がないため、単純に基礎代謝量(B)と身体活動によるエネルギー消費量の加算分(活動代謝量:Bx)と食事にともなう不可避的産熱量{特異動的作用:1/9B(1+x)}の3者の和が、その人のエネルギー必要量ということになる。このうちxは日常の身体活動量を表す指数である。3者の共通項である基礎代謝量Bはその人のエネルギー必要量を左右する基本的数値であることがわかる。基礎代謝量はその入の生命活動維持のための基本的エネルギー消費量に相当し、一般に成長が止まる成人期以降は加齢にともなって低下することがわかっている。図1は2人の研究者による多数の対象者を用いた基礎代謝量の実測値とその偏差の加齢にともなう変化を示したものである。栄養生理学的に見て中高年者の最大の特徴はこの基礎代謝量の低下であり、その結果としてのエネルギー必要量の低下である。図1からはまた、この基礎代謝量が極めて大きい生理的個人差を持っていることを知ることができる。しかもこの個人差が中年から高齢になるにつれて大きくなる傾向が認められるが、このことは一般に高齢になるほど、栄養需要に個入差が大きくなることを象徴していて興味深い。

図1 基礎代謝の年齢による変動と偏差

(Bouthby ら及びRibertson & Reid)

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